光のもとでⅡ
「御園生、手もやったのっ!?」
「ん、ちょっとおかしいかな」
言うなり飛翔くんにペットボトルを奪われ、蓋を緩めた状態で返された。
「おまえピアノっ」
「それはあと。今はワルツが優先」
苦手なスポーツドリンクをゴクゴクと一気に半分ほど飲み、最後に一口、ミネラルウォーターで口直し。
必要な箇所に湿布は貼った。しかも、肌色の湿布のため悪目立ちすることもない。
「さて……佐野くんと飛翔くん、ふたりとも運動部だけどどっちがテーピング上手かな?」
ふたりの顔を交互に見ていたら、「私が」と谷崎さんが声を挙げた。
「いわゆる固定だけじゃだめなので……。ダンスを踊るのに必要な部分を固めたら、動きから滑らかさが失われてしまいます」
その言葉に、私は佐野くんが持っていたテーピングを谷崎さんの手に託した。
やることをなくした佐野くんが飛翔くんに説明を求める。と、飛翔くんは話していいのか、と視線で訊いてきた。
「パートナーだもの。何がどうしてこうったのか、状況を知る権利はあるでしょう? でも、谷崎さんへの受け答えをしながらじゃ話せないから、飛翔くんにお願いしてもいい?」
「了解」
ふたりが立って話しているのに対し、階段に腰掛けている私の脚を触りながら谷崎さんがテープを巻いてくれた。
「本当に大丈夫なんですか……?」
「どうかな……? 痛み止めのお薬は十五分から二十分で効いてくるはずなの。それに、この湿布は結構強めの湿布薬だから、こっちはてきめんのはずなんだけど……。こういう使い方はしたことがないからなんとも言えなくて……」
飛翔くんの説明を聞き終わったらしい佐野くんがやってきて、
「湊先生に診てもらわなくてよかったの?」
「……以前球技大会で有無を言わさず病院送りにされたことがあるでしょう? それは嫌だなぁ、と思って。それに、本部の救護スペースで治療を受けたら、ほかの組に『負傷者がいます』って宣伝するのと変わらないでしょう? それもどうなのか、と。もしもワルツを見越して私を階段から突き落としたのなら、棄権するのも『怪我しました』って格好で出て行くのも悔しいもの」
「ん、ちょっとおかしいかな」
言うなり飛翔くんにペットボトルを奪われ、蓋を緩めた状態で返された。
「おまえピアノっ」
「それはあと。今はワルツが優先」
苦手なスポーツドリンクをゴクゴクと一気に半分ほど飲み、最後に一口、ミネラルウォーターで口直し。
必要な箇所に湿布は貼った。しかも、肌色の湿布のため悪目立ちすることもない。
「さて……佐野くんと飛翔くん、ふたりとも運動部だけどどっちがテーピング上手かな?」
ふたりの顔を交互に見ていたら、「私が」と谷崎さんが声を挙げた。
「いわゆる固定だけじゃだめなので……。ダンスを踊るのに必要な部分を固めたら、動きから滑らかさが失われてしまいます」
その言葉に、私は佐野くんが持っていたテーピングを谷崎さんの手に託した。
やることをなくした佐野くんが飛翔くんに説明を求める。と、飛翔くんは話していいのか、と視線で訊いてきた。
「パートナーだもの。何がどうしてこうったのか、状況を知る権利はあるでしょう? でも、谷崎さんへの受け答えをしながらじゃ話せないから、飛翔くんにお願いしてもいい?」
「了解」
ふたりが立って話しているのに対し、階段に腰掛けている私の脚を触りながら谷崎さんがテープを巻いてくれた。
「本当に大丈夫なんですか……?」
「どうかな……? 痛み止めのお薬は十五分から二十分で効いてくるはずなの。それに、この湿布は結構強めの湿布薬だから、こっちはてきめんのはずなんだけど……。こういう使い方はしたことがないからなんとも言えなくて……」
飛翔くんの説明を聞き終わったらしい佐野くんがやってきて、
「湊先生に診てもらわなくてよかったの?」
「……以前球技大会で有無を言わさず病院送りにされたことがあるでしょう? それは嫌だなぁ、と思って。それに、本部の救護スペースで治療を受けたら、ほかの組に『負傷者がいます』って宣伝するのと変わらないでしょう? それもどうなのか、と。もしもワルツを見越して私を階段から突き落としたのなら、棄権するのも『怪我しました』って格好で出て行くのも悔しいもの」