光のもとでⅡ
玄関を入ると唯兄とお母さんに出迎えられる。
「ただいま」
「「おかえりなさい」」
言った直後、お母さんと唯兄の目線が私の足元へ落ちる。
それは何かに気づいて視線を移したというよりも、目にする前から目的があって移した、という感じ。
「それ、剥がしたらどんなことになってるのかしらね……」
「知ってたの……?」
「生徒が怪我をすれば学校から連絡が入るのが普通よ。さらには学校で湊先生の診察を受けなかったことも聞いてるわ」
「ったくさー、朝あれだけ言ったのに連絡してこないしっ」
そういえば……。
「唯兄、ごめんなさい……。ちょっと、目の前のことにいっぱいいっぱいで家族に連絡するの、すっかり忘れていたの。でもね、最後には湊先生に診てもらおうと思ってたんだよ?」
上目遣いで唯兄を見ると、
「それも聞いてる。ほかにも怪我した生徒がいるとかで、湊先生病院に行っちゃったあとだったんでしょ? でもって、リィが事を大ごとにしたくないから湊先生のところに出向かなかったっていうところまで知ってるよ」
「えぇと……ずいぶん詳しく知っているのね」
苦笑を貼り付けながら感想を述べると、
「まぁね。ツカサっちから密告電話あったし」
密告……。
そうでしたかそうでしたか……。それなら詳細を知っていて当然ですよね……。
「唯、翠葉をいびるのはそのくらいにしたら? 翠葉と司くんは手洗いうがいしてリビングへいらっしゃい。湊先生の代わりに栞ちゃんと昇先生がいらしてるわ」
「えっ?」
びっくりしてリビングの先に視線を向ける。と、
「お邪魔してまーす!」
廊下の先で栞さんと昇さんが手を振っていた。次の瞬間、背後でインターホンが鳴る。
ツカサがドアを開けると、
「あ、帰ってきてた。そろそろ帰ってくるころかと思って来てみたんだけど……って、なんで秋斗がいんの? えっ、何? 昇さんと栞ちゃんもいるの?」
楓先生は廊下の奥とツカサの顔を交互に見て、
「俺、必要なかった?」
「っていうか、昇さんがここにいるって俺も知らなかったし……。秋兄は、今年の春から毎晩御園生家で夕飯を食べているらしい」
「うわぁ……迷惑なやつ。身内として恥ずかしいよ」
「あら、そんなことないわよ? 秋斗くん、ちゃんと食費入れてくれてるし、アンダンテのケーキやタルト、美味しいクッキーを持ってきてくれたりするし」
お母さんが人差し指を立てて軽快に話すと、
「ぅお~い。そんな狭いところで喋ってないで上がったら?」
リビングからやってきたお父さんの提案にみんなが頷いた。
「外から入ってきた人は手洗いうがいを忘れずに。司くんはここにいること、ご両親知ってらっしゃるの?」
「今日はこっちに帰ると話してきたので」
「それならうちでご飯食べて行きなさい」
「いえ――」
「じゃ、今日の夕飯はどうするの?」
「コンシェ――」
「はい、却下。今日は栞ちゃん特製のビーフシチューなの。人がひとり増えるくらい問題ないわ」
お母さんはマイペースに話を進めると、ツカサの返事を聞くでもなくスタスタとキッチンへ入っていった。
「ただいま」
「「おかえりなさい」」
言った直後、お母さんと唯兄の目線が私の足元へ落ちる。
それは何かに気づいて視線を移したというよりも、目にする前から目的があって移した、という感じ。
「それ、剥がしたらどんなことになってるのかしらね……」
「知ってたの……?」
「生徒が怪我をすれば学校から連絡が入るのが普通よ。さらには学校で湊先生の診察を受けなかったことも聞いてるわ」
「ったくさー、朝あれだけ言ったのに連絡してこないしっ」
そういえば……。
「唯兄、ごめんなさい……。ちょっと、目の前のことにいっぱいいっぱいで家族に連絡するの、すっかり忘れていたの。でもね、最後には湊先生に診てもらおうと思ってたんだよ?」
上目遣いで唯兄を見ると、
「それも聞いてる。ほかにも怪我した生徒がいるとかで、湊先生病院に行っちゃったあとだったんでしょ? でもって、リィが事を大ごとにしたくないから湊先生のところに出向かなかったっていうところまで知ってるよ」
「えぇと……ずいぶん詳しく知っているのね」
苦笑を貼り付けながら感想を述べると、
「まぁね。ツカサっちから密告電話あったし」
密告……。
そうでしたかそうでしたか……。それなら詳細を知っていて当然ですよね……。
「唯、翠葉をいびるのはそのくらいにしたら? 翠葉と司くんは手洗いうがいしてリビングへいらっしゃい。湊先生の代わりに栞ちゃんと昇先生がいらしてるわ」
「えっ?」
びっくりしてリビングの先に視線を向ける。と、
「お邪魔してまーす!」
廊下の先で栞さんと昇さんが手を振っていた。次の瞬間、背後でインターホンが鳴る。
ツカサがドアを開けると、
「あ、帰ってきてた。そろそろ帰ってくるころかと思って来てみたんだけど……って、なんで秋斗がいんの? えっ、何? 昇さんと栞ちゃんもいるの?」
楓先生は廊下の奥とツカサの顔を交互に見て、
「俺、必要なかった?」
「っていうか、昇さんがここにいるって俺も知らなかったし……。秋兄は、今年の春から毎晩御園生家で夕飯を食べているらしい」
「うわぁ……迷惑なやつ。身内として恥ずかしいよ」
「あら、そんなことないわよ? 秋斗くん、ちゃんと食費入れてくれてるし、アンダンテのケーキやタルト、美味しいクッキーを持ってきてくれたりするし」
お母さんが人差し指を立てて軽快に話すと、
「ぅお~い。そんな狭いところで喋ってないで上がったら?」
リビングからやってきたお父さんの提案にみんなが頷いた。
「外から入ってきた人は手洗いうがいを忘れずに。司くんはここにいること、ご両親知ってらっしゃるの?」
「今日はこっちに帰ると話してきたので」
「それならうちでご飯食べて行きなさい」
「いえ――」
「じゃ、今日の夕飯はどうするの?」
「コンシェ――」
「はい、却下。今日は栞ちゃん特製のビーフシチューなの。人がひとり増えるくらい問題ないわ」
お母さんはマイペースに話を進めると、ツカサの返事を聞くでもなくスタスタとキッチンへ入っていった。