光のもとでⅡ
「えぇと……はい。でも、そんなに痛くはなくて、ペットボトルの蓋を開けるときに痛みが走ったくらい。捻る動作がだめみたいです」
テーピングと湿布を剥がされ状態を見てもらう。と、
「見たところ腫れちゃいないが……これか?」
「それっ、痛いです……」
「筋を痛めたんだな。湿布貼って、しばらくは負荷をかけないようにな。それで治る。テーピングの仕方は今のでいいから、あとで司に教えてもらえ」
「ピアノの練習は……?」
「来週の半ばにもう一度診てやるから、それまではやめとけ」
「はい。……昇さん、あとね……」
「却下」
私が何を言う前にツカサに却下されてしまった。
「おいおい、俺に訊こうとしてんのになんでおまえが却下すんだよ」
昇さんはツカサに文句を言ってからこちらに向き直り、
「なんだ?」
「……明日、ツカサと藤山に紅葉を見に行く約束をしていたんです。それもやっぱりだめ……です?」
ツカサの刺さるような視線を感じつつおうかがいを立てる。と、
「いや、別にかまわねぇよ。司、おまえ何却下してんだよ」
「だって、こんなに腫れてて外を出歩くとかバカのすることだし、昇さんだって安静にって――」
ツカサが話している途中で秋斗さんがくつくつと笑い出し、笑ったままに口を挟んだ。
「司、少し落ち着いて考えな。藤山って、光朗道へ行くんだろ? それなら、車椅子を借りていけば問題ない。翠葉ちゃんが歩かなければいいんだから、それなら可能だろ?」
「そういうこった。車椅子ならこのマンションにだってあるし、病院から借りたっていい」
秋斗さんと昇さんに諭され、ツカサは決まり悪そうに視線を逸らす。
「まあまあ、ふたりともそのくらいにしてやって。司も疲れてるんだよ。翠葉ちゃんが怪我したってわかってからてんぱってたっぽいし」
楓先生の言葉にびっくりする。
そうなの……? 怒っているのは知っていたけれど、冷静さを欠いていたとか、てんぱっていたようには見えなかった。
改めてツカサを見ると、少し顔を赤らめばつの悪い顔をしていた。
「ほらほら、いい加減にご飯にするよ!」
唯兄の言葉にみんなが席に着くと、
「じゃ、俺はこれで帰ります」
楓先生だけが帰っていった。
テーピングと湿布を剥がされ状態を見てもらう。と、
「見たところ腫れちゃいないが……これか?」
「それっ、痛いです……」
「筋を痛めたんだな。湿布貼って、しばらくは負荷をかけないようにな。それで治る。テーピングの仕方は今のでいいから、あとで司に教えてもらえ」
「ピアノの練習は……?」
「来週の半ばにもう一度診てやるから、それまではやめとけ」
「はい。……昇さん、あとね……」
「却下」
私が何を言う前にツカサに却下されてしまった。
「おいおい、俺に訊こうとしてんのになんでおまえが却下すんだよ」
昇さんはツカサに文句を言ってからこちらに向き直り、
「なんだ?」
「……明日、ツカサと藤山に紅葉を見に行く約束をしていたんです。それもやっぱりだめ……です?」
ツカサの刺さるような視線を感じつつおうかがいを立てる。と、
「いや、別にかまわねぇよ。司、おまえ何却下してんだよ」
「だって、こんなに腫れてて外を出歩くとかバカのすることだし、昇さんだって安静にって――」
ツカサが話している途中で秋斗さんがくつくつと笑い出し、笑ったままに口を挟んだ。
「司、少し落ち着いて考えな。藤山って、光朗道へ行くんだろ? それなら、車椅子を借りていけば問題ない。翠葉ちゃんが歩かなければいいんだから、それなら可能だろ?」
「そういうこった。車椅子ならこのマンションにだってあるし、病院から借りたっていい」
秋斗さんと昇さんに諭され、ツカサは決まり悪そうに視線を逸らす。
「まあまあ、ふたりともそのくらいにしてやって。司も疲れてるんだよ。翠葉ちゃんが怪我したってわかってからてんぱってたっぽいし」
楓先生の言葉にびっくりする。
そうなの……? 怒っているのは知っていたけれど、冷静さを欠いていたとか、てんぱっていたようには見えなかった。
改めてツカサを見ると、少し顔を赤らめばつの悪い顔をしていた。
「ほらほら、いい加減にご飯にするよ!」
唯兄の言葉にみんなが席に着くと、
「じゃ、俺はこれで帰ります」
楓先生だけが帰っていった。