光のもとでⅡ
Side 司 03話
チアリーディングのあとは男子全員による棒倒し。
準備で男子が上半身裸になると、そこかしこで女子の叫び声が挙がる。
こういう反応が一般的なのかは知らないが、翠は大丈夫だろうか……。
さすがに今ばかりは集計を翠ひとりに頼るしかないわけで、対策を講じてやることもできない。
人の合間を縫って本部席に目をやると、不意をついて優太に絡まれた。
「なーに? 翠葉ちゃんが心配?」
「優太邪魔」
「ひどっ」
言いながらもくつくつと笑い、
「でも、そんな心配することないでしょ? 翠葉ちゃんだってお兄さんがいるんだからさ」
その考えは甘いと思う。
男兄弟がいるからと言って大丈夫とは限らない。何せ、翠の兄は自他共に認めるシスコンバカの御園生さんなのだから。
ようやく見えた翠は、本部席で見事に俯いていた。
やっぱりか……。
きっと目のやり場に困ってあの状態なのだろう。
「げ……まじ? あれ、翠葉ちゃん大丈夫なの?」
「さぁ……だめなんじゃない?」
「助けてあげないの?」
「助けられる状況じゃないだろ。一試合終わらないことには誰に代わりを頼むこともできない」
「あちゃ~……でもさ、男兄弟が家にいたら、夏に半裸くらい見るもんじゃない?」
「御園生さんがどれだけ過保護なのか、優太はもう少し熟知するべき。それから、夏に半裸云々だけど、それがどのくらい一般的なのか俺は知らない。少なくとも俺は、夏だからといって半裸でいることはない」
一回戦敗退した人間に視線を配ると、その中に悔しそうな顔をした貝塚がいた。
紫苑祭実行委員長をしている貝塚なら翠と面識もあるから大丈夫だろう。
「貝塚」
「お? 藤宮どうした?」
「棒倒しの間だけ、翠と集計変わってやってほしい」
「え?」
「あれあれ」
優太と朝陽が本部席を指差すと、相変わらず俯いたままの翠がいた。
「へ……? 御園生さんどうしたの?」
「本来男子に免疫がないとああなるのかもね? ほかの女子みたいに叫ぶ余裕もないみたい」
朝陽の説明に貝塚は納得したようで、
「んじゃ、ちょっと格好良く救出に行ってくるわ!」
と走り出した。
「ま、格好良く救出ったってあの調子だからね。間違いなく貝塚くんのことも視界に入れらんないよね……」
優太の言葉は的を射ており、翠は叫び声こそ挙げなかったものの、救世主である貝塚ですら正視することができなかった。
「あれは手強いね……。司、苦労してそう」
朝陽の言葉が理解できずに視線を向けると、
「何、意味わからないって顔してるの?」
「意味がわからないから」
「あぁ~……なんでもないなんでもない。聞かなかったことにして」
言いながら、朝陽はそそくさと進行方向を変えた。
その場に残された優太に視線を向けると、
「いや、なんとなく何が言いたいのかはわかったけど……」
ひどく言いづらそうに言葉を濁す。
「何……」
「つまり、翠葉ちゃんとどうこうなるのにはひどく時間がかかりそうとか苦労しそうとか、その手のこと?」
たはは、と笑った優太は逃げるように駆け出した。
……確かに、苦労はしてる。してるけど、そのうえさらに苦労することになるというところまでは考えていなかった。
なんていうか、合意させることに必死だけど、その次は服を脱がせるのにすっごい苦労しそう……。
準備で男子が上半身裸になると、そこかしこで女子の叫び声が挙がる。
こういう反応が一般的なのかは知らないが、翠は大丈夫だろうか……。
さすがに今ばかりは集計を翠ひとりに頼るしかないわけで、対策を講じてやることもできない。
人の合間を縫って本部席に目をやると、不意をついて優太に絡まれた。
「なーに? 翠葉ちゃんが心配?」
「優太邪魔」
「ひどっ」
言いながらもくつくつと笑い、
「でも、そんな心配することないでしょ? 翠葉ちゃんだってお兄さんがいるんだからさ」
その考えは甘いと思う。
男兄弟がいるからと言って大丈夫とは限らない。何せ、翠の兄は自他共に認めるシスコンバカの御園生さんなのだから。
ようやく見えた翠は、本部席で見事に俯いていた。
やっぱりか……。
きっと目のやり場に困ってあの状態なのだろう。
「げ……まじ? あれ、翠葉ちゃん大丈夫なの?」
「さぁ……だめなんじゃない?」
「助けてあげないの?」
「助けられる状況じゃないだろ。一試合終わらないことには誰に代わりを頼むこともできない」
「あちゃ~……でもさ、男兄弟が家にいたら、夏に半裸くらい見るもんじゃない?」
「御園生さんがどれだけ過保護なのか、優太はもう少し熟知するべき。それから、夏に半裸云々だけど、それがどのくらい一般的なのか俺は知らない。少なくとも俺は、夏だからといって半裸でいることはない」
一回戦敗退した人間に視線を配ると、その中に悔しそうな顔をした貝塚がいた。
紫苑祭実行委員長をしている貝塚なら翠と面識もあるから大丈夫だろう。
「貝塚」
「お? 藤宮どうした?」
「棒倒しの間だけ、翠と集計変わってやってほしい」
「え?」
「あれあれ」
優太と朝陽が本部席を指差すと、相変わらず俯いたままの翠がいた。
「へ……? 御園生さんどうしたの?」
「本来男子に免疫がないとああなるのかもね? ほかの女子みたいに叫ぶ余裕もないみたい」
朝陽の説明に貝塚は納得したようで、
「んじゃ、ちょっと格好良く救出に行ってくるわ!」
と走り出した。
「ま、格好良く救出ったってあの調子だからね。間違いなく貝塚くんのことも視界に入れらんないよね……」
優太の言葉は的を射ており、翠は叫び声こそ挙げなかったものの、救世主である貝塚ですら正視することができなかった。
「あれは手強いね……。司、苦労してそう」
朝陽の言葉が理解できずに視線を向けると、
「何、意味わからないって顔してるの?」
「意味がわからないから」
「あぁ~……なんでもないなんでもない。聞かなかったことにして」
言いながら、朝陽はそそくさと進行方向を変えた。
その場に残された優太に視線を向けると、
「いや、なんとなく何が言いたいのかはわかったけど……」
ひどく言いづらそうに言葉を濁す。
「何……」
「つまり、翠葉ちゃんとどうこうなるのにはひどく時間がかかりそうとか苦労しそうとか、その手のこと?」
たはは、と笑った優太は逃げるように駆け出した。
……確かに、苦労はしてる。してるけど、そのうえさらに苦労することになるというところまでは考えていなかった。
なんていうか、合意させることに必死だけど、その次は服を脱がせるのにすっごい苦労しそう……。