光のもとでⅡ

Side 秋斗 おまけ

 俺が司だったら――。
 俺が彼女と付き合えていたなら――。
 そんな幸せすぎる想像するなら、司と似たり寄ったりの行動を取っていた気がする。
 そんな自分に苦い笑みを漏らしつつ、
「いや、俺は司よりも性質が悪いかな」
 事を起こした生徒を訴える権利が自分にないのなら、裏から手を回して退学にさせるくらいのことはしていたと思う。
 さらには、今後一切彼女に害が及ばぬよう、校内であってもべったりと付きまとっていたかもしれない。
 彼女の交友関係は考慮しつつ、自分がそこに加わることが自然に思えるよう立ち振舞って。
 始終蒼樹が側にいたように、俺が側にいることはなんらおかしなことではないと刷り込み、彼女を囲っていただろう。
 彼女を箱庭の少女にしてしまったと後悔をしている人間がいることを知りながら、俺は自分という鳥かごの中に大きな窓を設け、心ゆくまで外を見せることで彼女を満足させる方法を確立していたに違いない。
 司は今以上の警護を、と俺に連絡してきたけれど、俺はそれを自分でしようとしたに過ぎない。
「……どこまで同じなんだか」
 それも、九歳も年下の従弟と。
 俺は彼女から少し離れることで全体像が見え、自分がどう接するべきなのかを知り得たけれど、今の司にそれは難しい。
 司はどこで気づくだろう。
 気づいたらどうするのか。
 気づいたことに気づかぬふりして彼女を囲うだろうか。
「それができるのは高校までだけど……」
 彼女が候補に挙げている進路が司と交わることはない。つまり、進学先は必ず別になる。
 そしたら、彼女は新しい世界を見ることになるし、趣味の合う、新たな友人だってできるだろう。
「新しい世界を見た彼女が何を見出すのか……。刺激を受けた彼女がどう変化するのか」
 それを言うなら司にだって同じことが言えるはずなのに、司が翠葉ちゃん以外の女の子を視界に入れるとは思えない。
 こんなふうに言い切れてしまうあたりは「血」なのか……。
 乾いた笑いを零しては、ぬるくなったラベンダーティーを口にする。
「ほかの男を目に入れた翠葉ちゃんなんか見たら、軟禁しかねないな」
 それは司にも俺にも言えることで、やっぱり苦笑いをする羽目になる。
 一緒にいた時間が長ければ長いほど、考え方や嗜好は似るものなのかもしれない。
 改めて司との関わりの深さを実感したところで、別のつながりを意識する。
「今回のこと、静さんやじーさんが知ったらどうなるのかな」
 通常なら、一度下された処罰が覆されることはない。が、あのふたりにおいてはその限りではない。
 でも、退学処分なんてことになろうものなら、それを知った彼女は心を痛める。
 未だ早起きは苦手だが、
「明日はじーさんを捕まえに行くか……」
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