光のもとでⅡ
件名: メール開通!

本文: 日曜日のライブ、絶対に来いよ!
    春夏秋冬も楽しみにしてるからさ!
    それから右手、くれぐれもお大事に。
    もう怪我すんなよ?

    慧



「へぇ……連絡先の交換までしてきてたんだ?」
「うん。悪い人じゃないと思ったから」
「ふーん……」
「……だめ、だった?」
「別にいいんじゃない?」
 そう言う割にそっぽを向いている。
「もぅ……どうしたら機嫌なおしてくれる?」
 ツカサは澄ました表情で私を見る。
「今日、ほかにも何かあったんじゃない? 俺に報告することは?」
 ほかに……? ほかに――何かあったっけ……?
 これといったものが思いつかずにうんうん唸っていると、ツカサの手が額へ伸びてきた。
 その動作にはっとする。
「秋斗さんの手っ!? でもっ、熱を心配されて額に触れただけよ?」
「それ、抱きしめられたわけでもキスされたわけでもないって言いたいの?」
 私はコクコクと頷く。すると、
「俺は翠が知らない男たちに囲まれているだけでも嫉妬するし、俺以外の男が翠に触れることだってよくは思わない」
「……ごめんなさい。でも、突然でよけられなかったんだもの……」
「急に抱きしめられてもキスされても同じ言い訳を口にしそう」
「うう、ごめんなさい……。以後、これまで以上に気をつけます。願わくば許してほしいのだけど、どうしたら許してくれる……?」
「……キス、してくれたら?」
「えっ――」
 慌てる私に、ツカサは絶対零度の笑みを見せる。
「さぁ、どうする?」――そんな表情で笑みを深めるからひどい。
 何も言えずに唇をきつく引き結び、考えに考えて行動に移す。
「これで我慢してっ」
 勢いをつけてツカサに抱きつくと、しばらくしてツカサの胸から振動が伝ってきた。さらにはくつくつと笑い声まで降ってくる。
 そっとツカサの顔を見上げると、絶対零度の笑みを引っ込めおかしそうに笑っているからひどい。
「意地悪……」
「翠が悪い」
 そう言うと、再び口を塞がれた。けれどそれはさっきのキスとは違い、優しく求めるような、熱を帯びたキスだった。
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