光のもとでⅡ
通路に面する両開きのドアを開けばパーティーホール。
照明を点けて中に入ると、
「わぁ、広ーい……」
翠は驚くままに声を挙げた。そして、
「ツカサ、奥の通路とドアはどこへ通じているの?」
翠が見ているのは向かって左側にある通路とドア。
「手前と奥のドアはレストルームがある通路へ出る通用口。それから、一番奥の通路は調理室に通じている」
「パーティーに出されるお料理はすべてそこで作られるの?」
「そう。見に行く?」
「ううん、いい……」
パーティーホールをあとにして、次の区画へ移動する。
「右側には応接室が五部屋。左側は会議室が三部屋」
応接室と会議室を一部屋ずつ見せると、ゲストルームのある区画へ移動した。
全部屋同じ間取りでインテリアも統一されていることから、案内したのは一部屋のみ。
次は居住区画だがそこは通り過ぎ、書庫や納戸使いしている部屋をいくつか見せて回った。
写真が飾られている部屋へ案内すると、
「わっ! ツカサの小さいころの写真!? あ、湊先生や楓先生もっ! 湊先生髪の毛長ーいっ! こっちは若いころの涼先生と真白さん!? わーわーわーーーっ!」
翠は車椅子に座っていることをもどかしそうに、
「全部見たいっ!」
と、端から順に回ってとでも言うように俺を見た。
「ちっちゃいころのツカサ、かわいいっ!」
言いながら翠は笑う。
「でも、ちっちゃくてもツカサだね? 笑ってる写真が一枚もない。あ、これ秋斗さんと楓先生? 本当に双子みたい……。あっ! 湊先生の隣にいるのは栞さん?」
稀に見るテンションの高さ。なんで小さいころの写真だけでそんな――なるかも……。
翠の小さいころの写真見たら、こんな自分でもちょっとはテンションが上がりそうだ。
「翠の小さいころの写真、今度見せて」
「え?」
「だから――」
「えっと……やだ」
「なんで……」
「だって、かわいくないんだもの」
「変な写真しかないってこと?」
「そういうわけじゃないのだけど……カメラ目線の写真で笑っているものが一枚もないの」
「そんなの、俺だって同じなんだけど……」
「ううう……わかった、今度ね?」
そんな約束をして次の部屋へ移動する。そこは、俺や姉さん、兄さんが描いた絵が飾られた部屋だった。
「うわぁ……三人ともとっても上手。あ……これは秋斗さんの絵なのね。こっちは海斗くん」
翠は食い入るように絵を眺め、くるっとこちらへ振り向いた。
「ツカサ、来年の誕生日プレゼント、おねだりしてもいい?」
「別にいいけど……」
何を……?
「ツカサの時間をちょうだい」
「どういう意味?」
「絵が欲しい。ツカサの描いた、風景画が欲しい」
まさかそんなオーダーをされるとは思わず呆けていると、
「だめ?」
だから、上目遣いのお願いとか反則だから……。
照明を点けて中に入ると、
「わぁ、広ーい……」
翠は驚くままに声を挙げた。そして、
「ツカサ、奥の通路とドアはどこへ通じているの?」
翠が見ているのは向かって左側にある通路とドア。
「手前と奥のドアはレストルームがある通路へ出る通用口。それから、一番奥の通路は調理室に通じている」
「パーティーに出されるお料理はすべてそこで作られるの?」
「そう。見に行く?」
「ううん、いい……」
パーティーホールをあとにして、次の区画へ移動する。
「右側には応接室が五部屋。左側は会議室が三部屋」
応接室と会議室を一部屋ずつ見せると、ゲストルームのある区画へ移動した。
全部屋同じ間取りでインテリアも統一されていることから、案内したのは一部屋のみ。
次は居住区画だがそこは通り過ぎ、書庫や納戸使いしている部屋をいくつか見せて回った。
写真が飾られている部屋へ案内すると、
「わっ! ツカサの小さいころの写真!? あ、湊先生や楓先生もっ! 湊先生髪の毛長ーいっ! こっちは若いころの涼先生と真白さん!? わーわーわーーーっ!」
翠は車椅子に座っていることをもどかしそうに、
「全部見たいっ!」
と、端から順に回ってとでも言うように俺を見た。
「ちっちゃいころのツカサ、かわいいっ!」
言いながら翠は笑う。
「でも、ちっちゃくてもツカサだね? 笑ってる写真が一枚もない。あ、これ秋斗さんと楓先生? 本当に双子みたい……。あっ! 湊先生の隣にいるのは栞さん?」
稀に見るテンションの高さ。なんで小さいころの写真だけでそんな――なるかも……。
翠の小さいころの写真見たら、こんな自分でもちょっとはテンションが上がりそうだ。
「翠の小さいころの写真、今度見せて」
「え?」
「だから――」
「えっと……やだ」
「なんで……」
「だって、かわいくないんだもの」
「変な写真しかないってこと?」
「そういうわけじゃないのだけど……カメラ目線の写真で笑っているものが一枚もないの」
「そんなの、俺だって同じなんだけど……」
「ううう……わかった、今度ね?」
そんな約束をして次の部屋へ移動する。そこは、俺や姉さん、兄さんが描いた絵が飾られた部屋だった。
「うわぁ……三人ともとっても上手。あ……これは秋斗さんの絵なのね。こっちは海斗くん」
翠は食い入るように絵を眺め、くるっとこちらへ振り向いた。
「ツカサ、来年の誕生日プレゼント、おねだりしてもいい?」
「別にいいけど……」
何を……?
「ツカサの時間をちょうだい」
「どういう意味?」
「絵が欲しい。ツカサの描いた、風景画が欲しい」
まさかそんなオーダーをされるとは思わず呆けていると、
「だめ?」
だから、上目遣いのお願いとか反則だから……。