光のもとでⅡ
Side 慧 01話
午後一番で最近の集大成というべき演奏を終え、心地よい疲労を感じながらソファに身を投げ出していると、胸元でメールの受信を知らせる音が鳴った。
スマホを取り出すことすら億劫なんだけど……。
でも、俺の知り合いでメールを送ってくるのなんてひとりしかいないし、その人物は用もなくメールを送ってくるような人間じゃない。
俺は唸りながらスマホを取り出しメールを開く。と、そこにはひどく短い奇妙な文章が表示されていた。
「スマホ見て何ボーっとしてんの?」
ヴァイオリンの調弦をしていた春に尋ねられ、ディスプレイをそちらへ向ける。
「待ち人来る、ってなんだと思う?」
「さぁ……ってか、弓弦さんからじゃん」
「そうなんだけど、意味わかんなくてさ」
「っつかおまえ、頭働いてる? 目が死んだ魚なんだけど」
それはひどい言われようだ。
けど、春が言うのも強ち間違ってはおらず、頭が働いているとは言いがたかった。
「弓弦さんって冗談言ったりいたずらするタイプじゃないだろ? 文面どおり、誰かが来てるのかもよ?」
少し離れたところで弓のメンテナンスをしていた真冬に言われ、確かに、と思う。
「ん~……俺、ちょっと弓弦んとこ行ってくるわ」
「えっ、今っ!? 俺らの演奏聴いてってくんねーのっ!?」
「わりっ、なんか今行かなくちゃいけない気がする」
そう言って、俺は学内にある仙波楽器出張所へと向かった。
先月オープンされたばかりの建物に入り、ショップに立っている女性、蓼科さんに声をかける。
「蓼科さん、こんちは。弓弦いる?」
「弓弦さんなら十五分ほどで戻るとおっしゃってたわ」
「えっ? 俺、弓弦からメールもらって来たんだけど……」
「聞いてる。第一応接室へ通すように言付かってるわ」
「ふーん……。そこ、誰かいたりする?」
「えぇ、とてもかわいらしいお客様がいらっしゃるはずよ」
かわいらしい客……?
ますますもって意味不明なんだけど……。
「俺の知ってる人?」
「さぁ、どうかしら」
「じゃ、蓼科さんは? 知ってる人?」
「いいえ。今日初めて見る子だったわ。とりあえず、行ってみたら?」
「そうする」
スマホを取り出すことすら億劫なんだけど……。
でも、俺の知り合いでメールを送ってくるのなんてひとりしかいないし、その人物は用もなくメールを送ってくるような人間じゃない。
俺は唸りながらスマホを取り出しメールを開く。と、そこにはひどく短い奇妙な文章が表示されていた。
「スマホ見て何ボーっとしてんの?」
ヴァイオリンの調弦をしていた春に尋ねられ、ディスプレイをそちらへ向ける。
「待ち人来る、ってなんだと思う?」
「さぁ……ってか、弓弦さんからじゃん」
「そうなんだけど、意味わかんなくてさ」
「っつかおまえ、頭働いてる? 目が死んだ魚なんだけど」
それはひどい言われようだ。
けど、春が言うのも強ち間違ってはおらず、頭が働いているとは言いがたかった。
「弓弦さんって冗談言ったりいたずらするタイプじゃないだろ? 文面どおり、誰かが来てるのかもよ?」
少し離れたところで弓のメンテナンスをしていた真冬に言われ、確かに、と思う。
「ん~……俺、ちょっと弓弦んとこ行ってくるわ」
「えっ、今っ!? 俺らの演奏聴いてってくんねーのっ!?」
「わりっ、なんか今行かなくちゃいけない気がする」
そう言って、俺は学内にある仙波楽器出張所へと向かった。
先月オープンされたばかりの建物に入り、ショップに立っている女性、蓼科さんに声をかける。
「蓼科さん、こんちは。弓弦いる?」
「弓弦さんなら十五分ほどで戻るとおっしゃってたわ」
「えっ? 俺、弓弦からメールもらって来たんだけど……」
「聞いてる。第一応接室へ通すように言付かってるわ」
「ふーん……。そこ、誰かいたりする?」
「えぇ、とてもかわいらしいお客様がいらっしゃるはずよ」
かわいらしい客……?
ますますもって意味不明なんだけど……。
「俺の知ってる人?」
「さぁ、どうかしら」
「じゃ、蓼科さんは? 知ってる人?」
「いいえ。今日初めて見る子だったわ。とりあえず、行ってみたら?」
「そうする」