光のもとでⅡ
「トップバッターの向坂瞬(さきさかしゅん)は芸大四年のヴァイオリニスト。コンクール総なめしていて顔もいいからファンも多い。二番手の関城奏(せきじょうかなで)は売り出し中のジャズシンガー。アメリカ帰りのシンガーで、音楽センスに目を瞠るものがあります。三番手が『Seasons』。彼らはまだ大学一年生だけど、高校のときから音楽活動してますからね。ファンも多いし、どこぞの音楽事務所が見に来ることもあります。現在、うちの事務所が契約へ向けて話をつめている最中です。そして、トリが慧くん。彼は引く手は数多なのに、まだどこの音楽事務所とも契約はしていません。願わくば、うちと契約して欲しいんですけどねぇ……」
 その説明に、すごい人たちにチケットをいただいたことを認識する。
「そういえば…芸大祭で慧くんがオケと協演してましたけど、一年生でもそんな機会があるんですね?」
「あぁ、あれはイレギュラーです」
「え……?」
「あのオケの奏者は学内オーディションで決まるんですが、オケの奏者もソリストも、たいていは三年生か四年生に決まるのが通例です。でも、慧くんは実力でもぎとっちゃったんですよね」
 言いながら先生は笑うけど、私は驚きに声を失っていた。
 慧くんはそんなにすごい人だったのか、と……。
 そんなすごい人に、「悪いと思っているのなら何か弾いて」などと、安易に演奏を要求してしまった自分はなんて恐れ多いことをしてしまったのか……。
 今になって、変な汗をかきそうだ。
 黙り込んでしまった私を見た先生はクスクスと笑いながら、
「御園生さん、どんなにすごい奏者であっても、御園生さんとそう年の変わらない大学生ですよ」
 そんなふうにフォローしてくれた。
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