光のもとでⅡ
 ライブが始まると、私はひたすらに驚いていた。
 まず、奏者との距離が近いこと。
 最前列の私たちから奏者までは二メートルほど。
 こんな近くで演奏を聴くのは初めてだった。
 生の音がダイレクトに鼓膜に届き、振動が肌に伝うと同時、ブワと鳥肌が立つ。
 芸大祭のコンサートでも同様のことを感じたけれど、それとは比べものにならない。
 もっと近く――息遣いすら聞こえてくる距離。
 ホールより狭い会場では、観客の熱すら身近に感じ、「ライブハウス」という言葉がいかにぴったりなものか、と思い知る。
「歌」というジャンルを生で聴くのは紅葉祭以来。
 でも、当たり前ながら、高校生とプロでは全然違う。
 茜先輩のそれともまったく違う歌声に、形容する言葉も見つけられないほど魅了された。
 あっという間に「Seasons」の番になり、ステージに出てきたメンバーは私に気づくとにこりと笑顔を見せてくれた。
 オーケストラで演奏される弦楽器しか聴いたことのなかった私には、四重奏という演奏がとても新鮮なものに思えた。
 四人が奏で出すハーモニーにうっとりしながら、ただひとり、チェロの艶めかしい音に惹きつけられる。
 なんというか、飛びぬけて色気のある音なのだ。
 そして、先のヴァイオリニストとはまったく違った音色を奏でる第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンは爽やかな風を運んでくる。
 それらを調和するのは穏やかに奏でられるヴィオラ。まるでひだまりのような音色。
 それぞれに個性があるのに互いを邪魔せず引き立てる。
 合奏ってすごい……。
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