光のもとでⅡ
「……なんかいやな予感がするから」
「いやな予感?」
秋兄は心底不思議そうな顔をしている。
もしかして、秋兄は翠が今日どこへ行っているのか知らないのだろうか。
そんなことを思いながら、
「今日、翠がどこへ行っているか聞いてる?」
「え? あぁ、レッスンのあと、ライブハウスに行くって聞いてるけど、それがどうかした?」
「それ、芸大祭で知り合った男たちに渡されたチケットだから」
秋兄は「あぁ……」といった感じで、
「理解した」
「それと車……」
「車?」
「翠を迎えに行くのに貸して欲しい……」
「くっ」
秋兄は身体を折り曲げ笑いだす。
「何? 涼さんに断わられたか何か?」
「断わられるのをわかっていて訊いたりしない」
やっぱり人選をミスっただろうか。
「司なら、次は楓を頼りそうなものだけど?」
「夜勤でいなかった……」
貸してもらえるのか貸してもらえないの改めて訊こうとしたら、
「わかったわかった。車は貸してやるし、翠葉ちゃんの指のサイズも見てやる。その代わり、翠葉ちゃんのお迎えには同乗させてもらう」
「はっ!?」
「だって俺、司の運転する車に乗ったことないし。どんな運転するのかもわからない人間に翠葉ちゃんを任せられるわけないだろ? それから、ライブハウスまでは俺ひとりで翠葉ちゃんを迎えに行かせろよ。このくらいの報酬はあってしかるべき。だろ?」
やっぱり頼む相手を間違えただろうか……。
なら、ほかに誰がいた?
姉さんの車は唯さんへ譲られて、静さんが姉さんのために買った車は納車前。栞さんの車もコンシェルジュの車も二十歳以上の人間じゃないと保険が適用されないし――
やっぱり迎えに行くなら秋兄を頼るしかなかった。
諦めてため息をつくと、
「でも、さすがにちょっと見たくらいじゃわからないからね。彼女の手をとるくらいの許可は欲しいところ」
調子にのってないだろうな……。
そんな視線を向けるも、「他意はない」といった視線を返される。
「それ以上は許さない」
さっきから妥協してばかり。
そんな状況に嫌気が差す。
「わかってる。何時に出る?」
「八時には支倉駅に着いていたいから、七時過ぎには出たい」
「了解。そのくらいにロータリーで落ち合おう」
「わかった」
「このあと御園生家に行くから、迎えに行く件は俺から話しておくよ。翠葉ちゃんにもこっちから連絡入れておくから、おまえが行くのはサプライズにしておけば?」
サプライズ云々は置いておくとして、御園生家に話を通してもらえるのは助かる。
俺は小さな声で、謝辞を述べた。
「いやな予感?」
秋兄は心底不思議そうな顔をしている。
もしかして、秋兄は翠が今日どこへ行っているのか知らないのだろうか。
そんなことを思いながら、
「今日、翠がどこへ行っているか聞いてる?」
「え? あぁ、レッスンのあと、ライブハウスに行くって聞いてるけど、それがどうかした?」
「それ、芸大祭で知り合った男たちに渡されたチケットだから」
秋兄は「あぁ……」といった感じで、
「理解した」
「それと車……」
「車?」
「翠を迎えに行くのに貸して欲しい……」
「くっ」
秋兄は身体を折り曲げ笑いだす。
「何? 涼さんに断わられたか何か?」
「断わられるのをわかっていて訊いたりしない」
やっぱり人選をミスっただろうか。
「司なら、次は楓を頼りそうなものだけど?」
「夜勤でいなかった……」
貸してもらえるのか貸してもらえないの改めて訊こうとしたら、
「わかったわかった。車は貸してやるし、翠葉ちゃんの指のサイズも見てやる。その代わり、翠葉ちゃんのお迎えには同乗させてもらう」
「はっ!?」
「だって俺、司の運転する車に乗ったことないし。どんな運転するのかもわからない人間に翠葉ちゃんを任せられるわけないだろ? それから、ライブハウスまでは俺ひとりで翠葉ちゃんを迎えに行かせろよ。このくらいの報酬はあってしかるべき。だろ?」
やっぱり頼む相手を間違えただろうか……。
なら、ほかに誰がいた?
姉さんの車は唯さんへ譲られて、静さんが姉さんのために買った車は納車前。栞さんの車もコンシェルジュの車も二十歳以上の人間じゃないと保険が適用されないし――
やっぱり迎えに行くなら秋兄を頼るしかなかった。
諦めてため息をつくと、
「でも、さすがにちょっと見たくらいじゃわからないからね。彼女の手をとるくらいの許可は欲しいところ」
調子にのってないだろうな……。
そんな視線を向けるも、「他意はない」といった視線を返される。
「それ以上は許さない」
さっきから妥協してばかり。
そんな状況に嫌気が差す。
「わかってる。何時に出る?」
「八時には支倉駅に着いていたいから、七時過ぎには出たい」
「了解。そのくらいにロータリーで落ち合おう」
「わかった」
「このあと御園生家に行くから、迎えに行く件は俺から話しておくよ。翠葉ちゃんにもこっちから連絡入れておくから、おまえが行くのはサプライズにしておけば?」
サプライズ云々は置いておくとして、御園生家に話を通してもらえるのは助かる。
俺は小さな声で、謝辞を述べた。