光のもとでⅡ
Side 桃華 04話
私からのプレゼントはレザーのスマホケース。
蒼樹さんが買い替えを考えていた手帳タイプのものだ。
私がプレゼントする前に、自分で購入されてしまったらどうしようかと思っていたけれど、今日会ったとき、いつもと変わらないスマホケースを使っているのを見て、心底ほっとした。
蒼樹さんはレザーケースにスマホをセットしながら、
「ネイビーっていいよね。自分だったら黒を選んじゃいそうな気がするから余計に。それに、内側のベージュの皮と色の相性がすごくいい。気に入った。ありがとう」
不意にスマホ画面が表示され、ディスプレイ中央に時刻が表示される。
「六時二十分か……。渋滞することも考えて、そろそろ出たほうがいいな」
蒼樹さんが立ち上がろうとしたとき、咄嗟にその腕を掴んだ。
「ん?」
「今日は八時まで大丈夫です」
「え?」
「母が、いつも七時前にはきちんと返してくれる人だからって……信じられる人だからって、今日の門限を八時にしてくれたんです」
「そうだったの?」
言って、再度腰を下ろす。
私は掴んだ腕を放せなくなっていた。
「桃華……?」
不思議そうな顔をする蒼樹さんに顔を覗き込まれ、気づけば自分からキスをしていた。
「っ……桃華っ?」
「ああああの、急にキスしてごめんなさいっ。でもっ、すごくキスしたくて――んっ」
今度は蒼樹さんに唇を塞がれた。
それは、いつもみたいに穏やかなキスじゃなくて、少し荒っぽさを感じる情熱的なキス。
何度も角度を変えて口付けを交わしたあと、
「桃華、口開けて」
「え……?」
一瞬口を開けた隙をつかれ、蒼樹さんの舌が口腔に入ってきた。
今までしたことのない深い口付けに翻弄されていると、ぎゅっと抱きしめられた。
「やば……止まんなくなりそう」
少し息の上がった蒼樹さんに、ひどく色気を感じてしまう。
「止まらなくていいのに……」
ぼそりと呟くと、
「いやでも、桃華未成年だし」
「青少年と成人でも、きちんとお付き合いしていて身体を重ねるのであれば淫行罪にはなりません。両親だって公認のお付き合いです。だから――」
抱いて欲しいと思うことははしたないだろうか。淫らだろうか。
でも、自分の中にある蒼樹さんを求める気持ちは大きく育ちすぎていて、キスだけでは物足りないと感じ始めていたのも事実。
それをこんなふうに伝えるつもりはなかったのだけど、このくらいの勢いがなければ伝えられなかったかもしれなくて。
若干パニックになりながら蒼樹さんにしがみつくと、
「ま、なんていうか……親公認は公認だけど、そういう関係になることまで認めてもらえているかはわからないよね……。でも、桃華の考えはわかったし、それなら、って思う自分もいる。でも……」
蒼樹さんは言葉を濁す。
「今日はやめておこう?」
「どうして、ですか?」
蒼樹さんは私を包むように抱きしめると、
「今桃華を抱いたとして、一時間以内に桃華を放せる自信が多分にない……」
そこまで言われてはっとする。
今日の門限が八時に伸びたところで、ここにいられるのは一時間が限度……。
つまり、一時間で行為を終えて身だしなみを整えなくてはいけないわけで、それがどれほどあわただしいことなのかはなんとなく想像ができた。
状況が呑み込めた途端、そびえ立つ現況にわたわたしていると、蒼樹さんにクスリと笑われた。
「桃華の気持ちはすっごく嬉しかったよ。正直、自分からは求められないと思っていたから」
「誠実ですね……」
「それはどうかな? ただ、保身的だったり臆病なだけだと思うけど」
ふたり顔を見合わせ笑みを零す。と、蒼樹さんの顔が近づいてきて目を閉じた。
唇が優しく重なり、
「今日はキスどまりだけど、あと一時間あるならもうちょっとイチャイチャしてようか」
「賛成です」
私はそれまで以上に蒼樹さんへ身を寄せた。
蒼樹さんが買い替えを考えていた手帳タイプのものだ。
私がプレゼントする前に、自分で購入されてしまったらどうしようかと思っていたけれど、今日会ったとき、いつもと変わらないスマホケースを使っているのを見て、心底ほっとした。
蒼樹さんはレザーケースにスマホをセットしながら、
「ネイビーっていいよね。自分だったら黒を選んじゃいそうな気がするから余計に。それに、内側のベージュの皮と色の相性がすごくいい。気に入った。ありがとう」
不意にスマホ画面が表示され、ディスプレイ中央に時刻が表示される。
「六時二十分か……。渋滞することも考えて、そろそろ出たほうがいいな」
蒼樹さんが立ち上がろうとしたとき、咄嗟にその腕を掴んだ。
「ん?」
「今日は八時まで大丈夫です」
「え?」
「母が、いつも七時前にはきちんと返してくれる人だからって……信じられる人だからって、今日の門限を八時にしてくれたんです」
「そうだったの?」
言って、再度腰を下ろす。
私は掴んだ腕を放せなくなっていた。
「桃華……?」
不思議そうな顔をする蒼樹さんに顔を覗き込まれ、気づけば自分からキスをしていた。
「っ……桃華っ?」
「ああああの、急にキスしてごめんなさいっ。でもっ、すごくキスしたくて――んっ」
今度は蒼樹さんに唇を塞がれた。
それは、いつもみたいに穏やかなキスじゃなくて、少し荒っぽさを感じる情熱的なキス。
何度も角度を変えて口付けを交わしたあと、
「桃華、口開けて」
「え……?」
一瞬口を開けた隙をつかれ、蒼樹さんの舌が口腔に入ってきた。
今までしたことのない深い口付けに翻弄されていると、ぎゅっと抱きしめられた。
「やば……止まんなくなりそう」
少し息の上がった蒼樹さんに、ひどく色気を感じてしまう。
「止まらなくていいのに……」
ぼそりと呟くと、
「いやでも、桃華未成年だし」
「青少年と成人でも、きちんとお付き合いしていて身体を重ねるのであれば淫行罪にはなりません。両親だって公認のお付き合いです。だから――」
抱いて欲しいと思うことははしたないだろうか。淫らだろうか。
でも、自分の中にある蒼樹さんを求める気持ちは大きく育ちすぎていて、キスだけでは物足りないと感じ始めていたのも事実。
それをこんなふうに伝えるつもりはなかったのだけど、このくらいの勢いがなければ伝えられなかったかもしれなくて。
若干パニックになりながら蒼樹さんにしがみつくと、
「ま、なんていうか……親公認は公認だけど、そういう関係になることまで認めてもらえているかはわからないよね……。でも、桃華の考えはわかったし、それなら、って思う自分もいる。でも……」
蒼樹さんは言葉を濁す。
「今日はやめておこう?」
「どうして、ですか?」
蒼樹さんは私を包むように抱きしめると、
「今桃華を抱いたとして、一時間以内に桃華を放せる自信が多分にない……」
そこまで言われてはっとする。
今日の門限が八時に伸びたところで、ここにいられるのは一時間が限度……。
つまり、一時間で行為を終えて身だしなみを整えなくてはいけないわけで、それがどれほどあわただしいことなのかはなんとなく想像ができた。
状況が呑み込めた途端、そびえ立つ現況にわたわたしていると、蒼樹さんにクスリと笑われた。
「桃華の気持ちはすっごく嬉しかったよ。正直、自分からは求められないと思っていたから」
「誠実ですね……」
「それはどうかな? ただ、保身的だったり臆病なだけだと思うけど」
ふたり顔を見合わせ笑みを零す。と、蒼樹さんの顔が近づいてきて目を閉じた。
唇が優しく重なり、
「今日はキスどまりだけど、あと一時間あるならもうちょっとイチャイチャしてようか」
「賛成です」
私はそれまで以上に蒼樹さんへ身を寄せた。