光のもとでⅡ
 二階で着替えを済ませて下りてくると、俺はハナに声をかけた。が、反応は薄い。
 ソファから下りる気がないどころか、顔をこちらに向けるのも億劫なほどに機嫌が悪いらしい。
 心当たりはひとつ。帰ってきたときに、母さんには声をかけたがハナには声をかけなかった――それのみ。
「はいはい、ただいまただいま」
 言いながらハナを抱っこする。と、多少機嫌が直ったらしく、ペロリ、と口元を舐められた。
「ハナ、そこに座ってこっち向いて静止」
 毛足が長いラグの上に座らせ、俺は携帯で写真を撮る。
 携帯が音を発したタイミングでハナが俺に寄ってきた。俺の膝に上がりこんでは携帯のディスプレイを覗き見る。まるで、写り具合を確かめるように。
 写り映えは上々。
「いいんじゃない?」
 その一言はハナの癇に障ったらしく、ツンと澄ました様子でキッチンへ行ってしまった。相変わらず、感情の起伏が激しい犬である。
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