光のもとでⅡ
 宙を見たまま翠の上体が傾ぐ。咄嗟に右腕で支えると、
「ツカサ、本当に大丈夫だから……」
 翠は俺の腕に反する力を加えた。
「……慌てて起き上がろうとするくらいには頭働いてないんじゃないの? それとも、相変わらずその頭は有益な学習をしない飾り物なのか?」
 思っていることをすべて口にすると、
「……ただ慌てちゃっただけ。本当に大丈夫だから……」
 これ以上とやかくいっても仕方がない。俺は自分にできる簡単な問診をすることにした。
「激しい頭痛、吐き気は?」
「頭は痛いけど頭痛という感じではないし吐き気もない」
「手足が痺れてたり力が入らないとかは?」
 翠はその場で手脚を振って見せる。
「大丈夫」
「じゃ、この指は何本?」
「二本」
「指を目で追って」
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