光のもとでⅡ
 あの酒を用意したのは「いい子」を意識した自分――与える印象を良くするためだけに動いた自分だ。でも、この場にいる人は、あんちゃんですらそんなこととは思いもしないだろう。
 俺は途端に後ろめたくなる。
 おじいさんは席を立ち、部屋の中にあるワインクーラーから一本のワインを取り出した。そのワインこそ、俺がお年賀に贈った白ワイン。
「このワインは前に一度飲んだことがある。とても美味しかったんだが、なかなか手に入るワインではない。手配するのは大変だっただろう?」
 俺は言葉に詰まる。
 それは確かに手に入りにくいワインで、俺はそれを「ウィステリアホテル」を介して手に入れた。
「すみません……それ、自分だけでどうにかしたものではありません。自分、以前ウィステリアホテルに籍を置いていたことがあります。そのときに知り合った人を頼って手に入れました」
 ここまで明確に話す必要はなかったかもしれない。でも、ここで話さないと窒息しそうだったんだ。ここでカミングアウトしないと、俺はずっと猫を被った状態でいることになると思った。
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