光のもとでⅡ
 そんな些細なことを気にすることができる程度には緊張が緩んでいたのかもしれない。
 長い廊下や丸い形状のまま使われている柱は、経年変化で味のある飴色になっている。そのツルツルとした表面は、思わず手を伸ばして感触を確かめたくなるほどだ。
 リィは嬉しそうに壁に触れながら歩いていた。その壁は珪藻土の塗り壁。自然素材が好きなリィには大好きなアイテムなのだろう。それが壁、っていうのはちょっとどうかと思うけど……。
 居間に通されると、今時珍しい囲炉裏があった。
 ぐおぉぉぉ……魚とか肉を串に刺して焼いて食いてぇ……。
「唯、涎を垂らしそうな顔してる……」
 あんちゃんに突っ込まれ、
「うん。今、俺の脳内には鮎の串焼きが描かれてる」
「あはは! 来る前に囲炉裏があること話しておけば良かったな」
 本当だよ、まったく……。
 囲炉裏に気を取られていた俺は、鬼瓦の存在を忘れていた。
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