光のもとでⅡ
「実は、去年のうちに謝罪したいと申し出てはいたんだが、何分携帯事件の直後だったこともあって、私の判断で話を止めていた」
 静さんが話を止めていたのは、きっと私の記憶が戻った直後だったからだろう。そのあとは、朗元さんとの再会や手術、リハビリ、進級試験、新学期――と私自身が慌しい中に身を置いていた。
「雅、どうする? ふたりで話したいのなら俺は席を外すけど」
「秋斗さん、来てくれてありがとう。彼女とふたりで話すことが許されるのなら、ふたりで話します」
 以前会った雅さんとは雰囲気も話し方も変わっていた。何より、秋斗さんの接し方が柔らかい……。以前見たときのような建前を前面に出す対応ではない。
「翠葉ちゃん、大丈夫かな?」
 秋斗さんに尋ねられ、私は意味もわからずコクリと頷く。
「秋斗、あとは任せる」
「はい」
 静さんは藤の庭園へ戻り、
「じゃぁ、俺は少し離れたところにいる。話が終わったら声をかけて」
 秋斗さんはひとり東屋を出ていった。
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