光のもとでⅡ
 すぐに目を閉じたけど、ツカサに見られていると思うと、それだけで身体が熱くなる。
 お化粧をしたのは初めてではない。けれど、アイシャドウとアイラインは初めてだったし、ここまではっきりとした赤い口紅を使ったところを見られるのは、今日が初めて。鏡を見ても、自分ではしっくりとこなかった。そんな私はツカサの目にどう映るのか――。
 そう考えると、恥ずかしいよりは少し怖かった。
「振袖もメイクも、似合ってる……」
 その言葉に息を呑む。目を開き、ゆっくりとツカサを見る。
「……本当?」
 尋ねたかったのに、嘘ではない、と表情を見て判断したかったのに、私は全部を言い終わる前にツカサから視線を逸らしていた。
 だって、ツカサと目が合ってしまったから。さっきは瞑られていた涼やかな目がこちらを向いていたから。
 普段なら、ツカサと一緒にいるときの沈黙は居心地の悪いものではない。けれど、今日はどうしてか会話がないと間が持たない気がして、
「なんか……恥ずかしいね」
 口にした直後、この内容では自分で自分を追い詰めかねないと察し、すぐに方向転換を試みる。
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