光のもとでⅡ
「あ、あのねっ、今日、須藤さんが調理スタッフに加わっているらしくて、さっき桃のシャーベットをいただいたの。須藤さんに会いに行きたいのだけど、案内してくれる?」
「……わかった」
 いつものようにツカサが先に立ち手を貸してくれる。私はその手に自分の手を重ね、ゆっくりと立ち上がった。

 建物に入るまで、刺さるような視線を注がれていた。それまでは直接声をかけられることはなかったのに、ツカサのエスコートに変わった途端、声をかけてくる人が増えたように思える。
 けれども、それらにはすべてツカサが対応してくれていた。私は尋ねられたときのみ、自分の名前を述べた程度。中には朗元さんとの関係や、静さんとの関係。秋斗さんとの関係を詳しく訊き出そうとする人もいたけれど、それらはツカサが上手にあしらってくれた。
 私に対し自己紹介をしてくれた人もいるけれど、藤宮一族であったりどこぞの企業のお偉いさんであることが多く、自分とは全く接点のない人たちを夫婦セットで覚えることなどできそうにはない。
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