光のもとでⅡ
「先日はホワイトデーのお菓子をありがとうございました。とっても美味しかったです。それから、先ほど静さんから桃のシャーベットをいただきました。そちらもとても美味しくて……。どうしてもお伝えしたくて、ここまで連れてきてもらいました」
「もったいないお言葉です。まだシャーベットが残っているのですが、司様とご一緒にいかがですか? あたたかいハーブティーもご用意いたします」
「わ、嬉しいです!」
「司様、すぐにご用意いたしますので応接室にてお待ちください」

 お屋敷に入ってから調理場まではさほど歩かなかったものの、調理場から応接室まではそれなりの距離があった。個人のおうちとして、これほど長い廊下を見たのは初めてだった。廊下の先が小さな四角に見える程度には長い。
 廊下はお庭に面しているものの、藤棚がある庭園との間には池があり、庭園まではちょっとした距離がある。
 池には錦鯉が悠然と泳いでおり、池の水面(みなも)は空に浮かぶ真っ白な雲を映している。
 これは廊下であり縁側とは違うのだろうけれど、ここで日向ぼっこをしたら気持ち良さそうだ。
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