光のもとでⅡ
「ここまで長い廊下を見たのは初めて。お庭も広いけど、お屋敷も広いのね?」
「それなりに」
「ここには元おじい様しか住んでいらっしゃらないの?」
「……じーさんの呼び方変わった?」
 不意に尋ねられて恥ずかしくなる。
「あ……あの、今日会ったときにね、『朗元さん』とは呼ばないように、って言われたの。それで、『元おじい様』と呼ばせていただくことになって……」
 朗元さんにお願いされたことだけれど、実の孫でもないのに「おじい様」は馴れ馴れしいだろうか……。それでも、「おじいさん」よりは「おじい様」な気がしたのだ。
 そんなことを考えているうちに応接室と思われる場所に着き、中へと促された。部屋へ入った直後、ぐい、とツカサに引き寄せられキスをされる。
「ツ、ツカサっ?」
 ごく至近距離で見たツカサの目に息が止まりそうだった。かろうじて出た言葉は、
「……口紅、ついちゃったよ?」
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