光のもとでⅡ
「和服姿が似合うのは知っていたのだけど、今日は一段と格好良くてまだまともに見られないの。……でも、いつもみたいに手をつないでいられたら、少しは落ち着く気がするから」
 けれども、ツカサから返ってきた言葉は、
「……現状に困っているのは翠だけじゃない」
 以上。
 私は困ると口にするほど困っているわけではないのだけど、ツカサは困っているらしい。主に何に困っているのかが知りたいところだけれど、自分がツカサの立場だったらそこまでは訊かれたくない気がしたから訊くのはやめた。
「……このおうち、とても広いけど住んでいるのは元おじい様だけなの?」
 私たちは目を合わせることなく話す。なんとも不自然な感じだけれど、手をつないでいるからか、そこまで奇妙な感じはしなかった。
「……じーさんのほかには住み込みのお手伝いさんとじーさんの側近、ボディーガード、料理長、紫さんと清良さん」
「……藤原さんも?」
「籍は入れてないけど、あの人紫さんの内縁の妻だから」
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