光のもとでⅡ
「……知らなかった」
「籍を入れるにはお互い難しい立場にいるから、この先もこのままだと思う」
「そうなのね……。でも、良かった。元おじい様がひとりじゃなくて」
 この広いおうちにひとりだったら――と考えると少し怖い。「ひとり」を意識したとき、寂しくて心細くてどの部屋にいても落ち着けない気がするから。
「……藤山には親族の家があるからさほど寂しくはないんじゃない?」
「……そういうもの?」
「さぁ。料理長を雇っているくせに、うちの夕飯にもよく顔を出すし。俺にはそんな寂しそうには見えない」
 大人になったら「ひとり」は寂しいものではなくなるのかな……。
「ツカサがひとりを感じるのはどんなとき?」
「……は?」
 ツカサは何を尋ねられたのかわからない、という顔で私を見ていた。きちんと視線を合わせたのは今日これが初めてかもしれない。
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