光のもとでⅡ
 秋兄から視線を逸らすと、
「次は紫さんと清良さんが翠葉ちゃんに会いにいく予定だったけど、ほかで足止め食らってるらしいから司が行きな」
 そんな簡単に言ってくれるな。
「会ったらかわいいなりきれいなり口にしろよ? いくら不器用でも、そのくらいは口にしてしかるべき。……ほら」
 俺は秋兄に背を押され、庭園の一角を目指して歩き始めた。

 翠と話している父さんに近づく。と、
「お礼を言うのはこちらのほうです。司とお付き合いいただけることになったとか?」
「あっ、はいっ――」
 俺のいないところで俺の話題を出してくれるな。
「あれは私に似て不器用な人間ですが、誠実な人間ではあると思います。もし、司が不義理を働くようでしたらぜひ私にご一報を。もっとも効果的な方法で報復することお約束いたします」
「そんなことっ――」
「父さん、そういうことは勝手に請け負わないでほしいんだけど。もっとも、浮気なんてするつもりはないし、何かあれば翠が俺に直接話せばいいことだ」
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