光のもとでⅡ
「ほらほら、司っちはリィの手ぇ取ってエスコートするんじゃないのぉ?」
 ……この人に技をかけて今すぐにでも落したい……。
「……とは申しましても、いたらない息子にエスコートが務まるものか……。ここは私たちが席を外す、というのが妥当でしょうね」
 父さんの言葉に御園生さんが動き、「ほら、唯行くぞ」と迷惑甚だしい生き物と共に立ち去ってくれた。

 ふたりにされたところで状況が変わるわけもなく、俺たちの間には気まずい空気があるのみ。
 椅子に掛けている翠は少し斜に構えており、その角度たるや計算されているとしか思えないほどに慎ましさをかもしだす。その姿勢で控え目に俯くと、うなじがより強調されて目のやり場に困った。
 隣に座ればうなじを見ずに済む、と椅子に腰掛けたものの、隣の翠がそわそわしていれば自分だって落ち着くことはできないわけで……。
「ツカサ、お願いがあるの」
「……何?」
 互いに顔を見ずの会話。
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