光のもとでⅡ
「目、瞑って?」
「は……?」
「目、瞑ってほしい」
 言われたとおりに目を瞑る。と、途端に遠慮のない視線が向けられた。
 ……何これ。
 しばらく無言が続き、我慢できなくなった俺は目を瞑ったまま、
「いつまで瞑ってればいいわけ?」
「……もう少し」
 ほどなくして、「ありがとう」と言われて目を開けた。ちら、と翠を見たら、翠は今まで以上に顔を赤らめていた。
「……今の、なんだったの?」
「……目、開けてるツカサは直視できないから……。でも、着物がすごく似合っていて、見たくて……だから……」
 どうやら、俺を見るためだけに目を瞑らせたらしい。これは俺がお願いしても聞いてもらえるものなのか。
「翠、目、瞑って」
「えっ!?」
「……俺にやらせたんだから聞いてくれてもいいと思う」
「あ……うん……」
 翠が静かに目を閉じ、失敗したと思った。
< 301 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop