光のもとでⅡ
 意識せずにはいられない自分を恥ずかしく思いつつ、翠にソファへ座るよう促す。翠はいつものように部屋に視線をめぐらせた。
 ソファに座ってしまえば手をつないでいる意味もない。離すべきか――。
 手から力を抜こうとしたそのとき、
「ツカサ、手、つないだままでもいい?」
 まだほんのりと赤い顔で言われ、離しかけた手に力をこめる。
「和服姿が似合うのは知っていたのだけど、今日は一段と格好良くてまだまともに見られないの。……でも、いつもみたいに手をつないでいられたら、少しは落ち着く気がするから」
 どうしたらこんな素直に思っていることを口にできるのか……。俺が言葉にしようとしたところで、
「……現状に困っているのは翠だけじゃない」
 これがせいぜい。
 人目が遮られた途端にキスをするほどには冷静さを欠いているし、今だって抱きしめたいという欲求を抑えるのが困難なくらいには平常心から程遠い。さらには、その着物を脱がせたいとすら思う――。
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