光のもとでⅡ
「……このおうち、とても広いけど住んでいるのは元おじい様だけなの?」
 翠が提供してくれた話題に少し救われた。
 俺たちは視線を合わせることなく、互いが同じソファに掛け正面を見て話をする。
「……じーさんのほかには住み込みのお手伝いさんとじーさんの側近、ボディーガード、料理長、紫さんと清良さん」
「……藤原さんも?」
「籍は入れてないけど、あの人紫さんの内縁の妻だから」
「……知らなかった」
「籍を入れるにはお互い難しい立場にいるから、この先もこのままだと思う」
「そうなのね……。でも、良かった。元おじい様がひとりじゃなくて」
 ちら、と翠を窺い見ると、心配そうな表情にほんの少し笑みを浮かべていた。そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫だと伝えたくて、
「……藤山には親族の家があるからさほど寂しくはないと思う」
「……そういうもの?」
「さぁ。料理長を雇っているくせに、うちの夕飯にもよく顔を出すし。俺にはそんな寂しそうには見えない」
 翠は少し考えてから口を開いた。
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