光のもとでⅡ
 翠は目の前に用意されたシャーベットを目にして満面の笑みを見せる。直視するのを躊躇するほど眩しい笑顔で、
「とっても美味しいのよ?」
「……甘いもの苦手なんだけど」
 俺は翠から少し視線を逸らしてシャーベットを見下ろす。と、
「果物の桃も苦手?」
「果物なら食べられるけど……」
「なら大丈夫っ! だって、果物の桃の甘さしかしないもの」
 それはそれは嬉しそうに笑って見せた。スプーンまで差し出されたら口にしないわけにはいかない。見られたまま食べるのか、と思うと少々気が重い。
 感想も求められるだろう。そう思いながらスプーンを口に運ぶ。と――口腔内に広がるのは桃の甘さのみだった。
 張り付いてやまない視線に答えるよう、「食べられる」と口にすると、
「ツカサ、やり直し。食べられる、はあまりいい感想じゃないよ? 美味しいなら美味しいって言わなくちゃ」
 やり直しを命じた翠は、じっと俺の顔を覗き込んでいた。
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