光のもとでⅡ
「さっきは話を聞いてなくてごめんなさい。次からは気をつけます。……ツカサはこのあと部活でしょう? 先に行って?」
 不自然に思われないように笑みを添える。と、
「翠、明日の予定は?」
「え……? 何もないけど……ツカサは?」
「部活がある」
「そう……部活、がんばってね」
 なんとなく、ツカサが何かを話そうとしているように思えた。でも、それを聞くにも心の準備が必要で、今度は自分から距離をとってしまった。

 ツカサが図書室を出て身体中の力が抜ける。ペタリ、と床に座り込み、思い切りため息をつく。
「なんだかもっと良くない方向へ行っちゃった気がする……」
 このタイミングでツカサが話そうとしていることを聞くべきだったのか……。
 どうしてうまくいかないのかな……。ケンカも何もしていないのに、どうして――。
 私はかばんを引き寄せると、ミネラルウォーターを手に取り一気に飲み干した。
「戸締り……戸締りして帰ろう。帰ったら考えよう」
 カウンター内で窓を操作すると、念のためにすべての窓を見回ってから、私はガランとした図書室をあとにした。
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