光のもとでⅡ
 陽が燦々(さんさん)と注ぐテラスへ出ると、思わぬ人物と鉢合わせる。部室棟で着替えを済ませてきた飛翔くんだ。
 私は未だに飛翔くんに苦手意識を持っている。けれども、鉢合わせて挨拶を交わさないのはおかしいし、だからといって「今から部活?」とわかりきっていることを口にしようものなら、それ相応の言葉を見舞われてしまうだろう。こういうときは、「部活がんばってね」かな……。それとも、「さようなら」?
 あれこれ考えているうちに、
「あんた……」
 飛翔くんから声をかけられ驚いた。
 第一アクションを取ってもらえたものの、飛翔くんの視線は鋭いものだし、次に何を言われるのか、と思わず身構えてしまう。……とはいえ、先ほどの失態を思い返せば、何を言われる前に自分から謝るべきだ。
「さっきは本当にごめんなさい。以後気をつけます」
 頭を下げたあと、恐る恐る飛翔くんを見上げる。と、そこには眉間にしわを寄せた顔があった。
 後ずさりしたいのを必死で堪えていると、
「司先輩の機嫌が悪いのって、あんたが原因?」
 何を言われたのかわからなければ良かった。でも、間が悪すぎた。頭より先に心が反応して、ポロリ、と涙が頬を伝う。
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