光のもとでⅡ
 かばんからコンパクトミラーを取り出し、目を見てうな垂れる。
 確かに目は充血していた。けれども、「睡眠不足」という理由で十分かわせる程度の充血だった。あれでは、「何かはあったけど見なかったことにしてください」と言っているのと変わらない。
「後悔……」
 しょんぼりしているうちにエレベーターは九階に着いてしまった。

 ゲストルームには誰もいなかった。
 帰宅後の習慣を済ませてダイニングへ行くと、テーブルにメモが二枚。
 一枚には唯兄の予定が書かれていた。
「午前中はホテル、午後からはマンション……」
 ここにいないということは、このマンションの六階にできた職場にいるのだろう。
 もう一枚はお母さんからの手紙。
 どうやら、仕事で幸倉へ帰っているようだ。夕方六時までには帰宅予定だけれど、六時を過ぎる場合には先に夕飯を食べていなさい、とのこと。
 キッチンへ行くと、すでに夕飯の用意が済んでいた。
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