光のもとでⅡ
「翠、このあとの予定は?」
『え……? あ……髪の毛を乾かすことくらい?』
 言った直後、慌てた様子で、
『あのっ、とくにはないよ。いいお天気だから少しお散歩に行こうかな、とは思っていたけれど……。ツカサは今日も部活って言ってたよね? 今はお昼休憩?』
「部活は午前で終わった。今、帰り。マンションへ向かってる」
 幸い、俺には自宅と呼べる場所が二ヶ所ある。
 一ヶ所は藤山にある実家。もう一ヶ所は姉さんが住んでいたマンションの一室。
 姉さんは結婚してから静さんの家へ移り、それまで使っていた部屋は俺に譲られた。
 名義上はまだ姉さんの所有物だが、俺が成人したら俺の名義に変更される予定。試験前には海斗や翠も来るけれど、それ以外は俺ひとり悠々自適に過ごせる場所となっていた。
『誰かに用事? ……確か、湊先生なら今日は栞さんと出かけるって言っていたけど。あ、楓先生?』
 そこでなぜ自分だと思わないのか……。
「翠に用事……っていうか、翠に会おうと思って向かっているし、電話してるんだけど」
『……本当?』
「本当」
 ここで本当かどうかを問われてしまうのは、俺に原因があるだろう。問われても仕方のないような態度をとってきたのだから。
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