光のもとでⅡ
「ハーブティーなら棚にある」
「棚ってどれかな……?」
 わざと尋ね返されるような返答をしてみたが、翠は廊下の先に視線を移し、俺を見ることはなかった。
 一緒にキッチンへ向かい棚から茶葉の入った缶を下ろす。と、翠はお茶の準備を始め、俺はその隣できれいにラッピングされた包みを解き、フロランタンをプレートへ移す。
 その後、一度はリビングへ行ったものの、「広すぎて落ち着かない」という翠の言葉に、テスト勉強で馴染みある俺の部屋へ移った。

「この部屋に来ると勉強しなくちゃ、って思っちゃう」
「リビングが落ち着かないって言ったのは翠だけど?」
「うん、そうなんだけど……」
 翠は苦笑を浮かべ、ベッドを背に膝を抱えて小さく座りこむ。
 その様が、より小さな面積で収まるように、と見えなくもなく、そんなにも居心地が悪いのか、と考えた。
 いつもなら、俺は窓際にあるデスクチェアかベッドの正面にある本棚の前に座るわけだけど、今日は意識して翠の隣に座った。
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