光のもとでⅡ
「手をつないで、翠の腕や肩が俺に触れて、翠の顔がすぐそこにあって――どこまで理性を保っていられるのかがわからないっ」
「……り、せ、い?」
 口にして、はっと気づいたようだった。翠は新たに驚いた表情を見せる。
「あのさ、俺をなんだと思ってる? 一応、人並みの性欲と生殖機能を備え持つ普通の男なんだけど」
 翠に対して性的な欲求を認識した途端に距離を欲した自分は、どこか微妙に「普通」からは外れるのかもしれない。
 でも、今だって、すぐ隣にいる翠からシャンプーだかボディーソープの香りがしていて微妙な心境なわけで――。
 色々思うところはあるものの、それはひとえに風呂上りだと聞いたうえで会う約束した自分が悪い。
 絶句した翠を見ながら思う。翠はまだ怖いと思っているだろうか、と。
 秋兄とキスはしている。でも、キスマークを付けられたときには擦過傷へ発展させ、さらには緊張型頭痛を勃発。その後色々あって記憶喪失――。
 こんな人間を相手にどうしたらいいのかなんてわかるか……。
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