光のもとでⅡ
 しかし、このまま距離を置き続ければ、間違いなく溝が深まる。そんなところを秋兄に掻っ攫われるのは面白くはない。ならば、諦めて話すしかないだろう。
 翠にとって、何が平気で何が怖いものなのか……。
「例えば、俺は翠を抱きしめたいと思うことだってあるし、キスをしたいと思うことだってある。でも、それがどこまで受け入れられるのかがわからない」
 翠の感情を探るように視線を合わせると、驚いた顔から一変して顔を真っ赤に染め上げた。
「抱きしめてキスしたら――俺はその先を自制できるのかがわからない。正直に言うなら自信がない」
 さあ、なんて答える?
「ツカサ……ツカサっ……」
 翠は視線を逸らして俯いたものの、ラグを見たまま俺の名前だけを連呼する。
「何」
「ツカサ、ツカサ……ツカサ――」
 いったい何度呼ぶつもりなのか。しだいに、つないでいる左手に力がこめられる。
 長い髪で隠れた顔を見るために、右手で翠の髪を耳にかける。と、
「っ……なんで泣いて――」
「ツカサ……もっと近くに寄ってもいい?」
 ラグに視線を固定させたまま、揺れる瞳で尋ねられた。
< 375 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop