光のもとでⅡ
 肩に顔をうずめて泣く姿を見て、こんなに不安にさせていたのか、と思い知る。
 俺は自分の右腕を翠に背に回し、さらに抱き寄せる。
 去年の夏よりは体重も増えた。それでも細い身体。細い首、華奢な肩、折れそうな腕、片腕で十分に支えられる腰――。
 そのどれもが俺の力で折れてしまいそうで、「掴む」という行為を躊躇する。
「悪かった……」
「ツカサは優しいだけだもの……」
「偏見」
「違うもの。……ツカサは知っているから……」
 秋兄とのことを言っているのだろう。それでも、
「……翠を不安にさせていた事実は変わらない」
 密着して、より近くでフローラルの香りが鼻腔をくすぐる。逃げたいわけじゃないけど、少し離れたい。それとも、これが「逃げ」なのか……。
 自分に問うものの答えは出ない。
 翠の背に回していた手を肩に当て、ふたりの間にスペースを作った。その些細な変化に翠は涙する。
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