光のもとでⅡ
「……付き合う前は手をつなぐことも抱きしめることも、そんなに意識していたわけじゃなくて……。でも今は――ありえないほど意識していて、翠ほど簡単に手をつなぐことはできない」
 想像していた話とはだいぶ違う内容だった。でも――。
「ツカサ……ひどい」
 自然と目に涙が浮かぶ。それは安心したからとかそういうことではなく、悔しさから。
「全然簡単じゃないっ。手つないでいいか訊くの、全然簡単じゃないっ。すごく……すごく勇気いるんだからっ」
 今までがどうだったか、というならば、そこまでの勇気は要しなかった。でも、この二週間は違う。いつも、恐怖と引き換えに口にしていた。
「全然簡単じゃないんだから……。私がそう言うたびにツカサは一瞬身を引くし、長くはつないでいてもらえないし、がんばって隣に座ってもすぐに席を立たれちゃうし……。全然――全然簡単じゃないっ」
 ツカサは申し訳なさそうな顔をしていた。そして、どこか困惑した表情を見せる。
「だから……悪い。これからはそういうのしないから。しない予定。……でも、何度も言うけど、俺、どこまで自制できるのかわからないから」
 ……ジセイ? ジセイって……? 自制?
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