光のもとでⅡ
「どうして急に――しかも、なんで笑顔なんですか……?」
 桃華が少しむくれた顔で訊いてくる。
「んー……司の気持ちがちょっとわかったから、かな?」
「え?」
「藤の会のときも、翠葉は髪を結い上げてたんだ」
「……翠葉ほど髪が長ければ結い上げるのが普通だと思いますけど?」
「男ってさ、たぶん襟足とか首筋に目がいく生き物なんだ。洋服を着ていても、髪をアップにしてたら目がいくかな? それが着物だったら余計にね」
 にこりと笑って桃華を見ると、意味を解したのか、桃華は真っ赤になった。
「それって……つまり……あの男がそういう目で翠葉を見ていたってことですかっ!?」
 声を潜め、抗議されるように尋ねられた。
 これは、男に対して「いやらしい」と不快な感情を持った感じだろうか。でも――。
「そういうところに目がいく男は嫌?」
「っ……嫌っていうかっ――」
 桃華は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 桃華が俯くと、切り揃えられた髪が前へ動き、華奢な首筋が露になる。
 俺は周りに人がいないことを確認してから桃華を腕の中に閉じ込めた。
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