光のもとでⅡ
「一本早いバスに乗ったら大丈夫かな?」
「……ふ~ん、そこまでして駅で待ち合わせしたいんだ?」
 唯兄はにやにやと笑いながら寄ってきた。私は恥ずかしくなって、
「唯兄の意地悪っ」
 言って自室に篭ってしまった。
「意地悪意地悪意地悪意地悪……」
 ブツブツ言いながら、ベッドに置いてあったクッションをポスポスと投げる。
「……待ち合わせ、なんだか憧れるんだもの……」
 言いながら、今度は投げたクッションを回収してベッドへ戻す。
「何を着ていこう……?」
 ツカサはどんな洋服を着てくるのかな……。
 少し想像するだけで、頬が熱を持つ。
 どうしよう……私服姿を目にして藤の会のときみたいなことになったら――。
 ツカサの制服姿には免疫ができたと思う。部活のときに着ている道着姿もだいぶ見慣れた。でも、私服姿は見慣れた、という感覚がない。
 勉強会や会食で見かける私服姿は何パターンかに決まっているし、去年の夏、お見舞いに来てくれていたときは大半が制服で、たまに私服、という感じだった。
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