光のもとでⅡ
「誕生日のお祝いを兼ねてご馳走したんだから、そんな鬱屈した顔しないでほしいんだけど。希望としては、笑顔を添えて美味しかったご馳走様、の一言」
 じっと見られて、希望ではなく要求に思えくる。
「……美味しかったです。ご馳走様」
「笑顔が添えられてなかったけど?」
 そうは言いつつも、ツカサはどこかおかしそうに口端を上げている。
「ありがとう……とっても美味しかったです」
 うまく笑えたかはわからない。でも、ツカサは満足そうに「どういたしまして」と言ってくれた。

 駅向こうにある楽器店ではハープのスペア弦と新しい五線譜を買い、気になるスコアを少し見てからお店を出た。
 来るときと同じように線路沿いを戻るものだと思っていたら、ツカサは途中で右折する。
「ツカサ? 駅、こっち……」
「食後の散歩は?」
「え? お散歩?」
「ちょっと歩いたところに公園がある」
「……公園?」
「とくに何があるわけじゃないけど、翠は好きだと思う」
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