光のもとでⅡ
 そう言って連れてこられた公園は、遊具がひとつもない公園だった。代わりに、ボートに乗れる池があり、ほどよく手入れされた森林がある。
 駅に近い場所にある公園としては珍しい気がした。
「こっち側は楽器店に来るくらいだから、こんな公園があるなんて知らなかった」
 背の高い木に囲まれた場所を歩くのは久しぶり。木で作られた小道は歩くたびにカポカポ、と乾いた音が鳴る。音の変化を聴き比べながら歩くのも楽しい。
「夏……」
「え? 何?」
 数歩後ろを歩いていたツカサを振り返ると、
「インハイが終わったら車の免許を取る予定」
「免許……?」
「そう。俺も翠も、免許を取れる年」
 言われて初めて気がついた。
「免許を取ったら、少し離れた場所にも森林浴に行ける」
 森林浴に連れていってもらえるのは嬉しい。でも――。
「別に遠出じゃなくても……私、藤山の散策ルートでも十分楽しめるよ?」
 どうしてか、ツカサは面白くなさそうな顔をする。
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