光のもとでⅡ
 カフェに入るとテラス席に翠を座らせ、二人分の飲み物をカウンターへオーダーしにいく。
 自分にコーヒーと翠にホットルイボスティーを持って戻ると、テーブルに百円玉が四枚、五十円玉が一枚。それらが横一列きれいに並べられていた。計四百五十円、それはホットルイボスティーの金額と同じ。つまりは払う、ということなのだろう。
 トレイを置くと、翠は「ありがとう」と言ってティーポットとカップをテーブルへ移動させた。
 俺は小銭を財布に入れながら、
「血の気が下がる感じは?」
「座ったら落ち着いた。だから携帯――」
「却下。マンションに戻るまでこのままで」
 翠は苦笑する。
「ツカサも過保護ね? まるで蒼兄みたい。そこまで気を遣ってくれなくても大丈夫だよ?」
「大丈夫って保証はないから却下」
 翠の携帯をテーブルの端に置くと、翠は小さくため息をついて諦めたようだ。
「ツカサはなんの本を買ったの?」
「母さんに頼まれていたレシピ本と経済に関する本。翠は?」
「植物の育て方が書かれている本なのだけど、本に載っている写真がかわいくて……」
 と、買ったばかりの本を見せてくれた。タイトルには「多肉植物の育て方」と書かれている。どうやら、俺が写真集だと思った本はこれだったらしい。
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