光のもとでⅡ
「おまえさ、翠葉ちゃんがバングルつけてること忘れてるだろ」
 秋斗さんの言葉にはっとして、返されたばかりの携帯を見る。と、そこにはいつもからは考えられないような数値が並んでいた。
 もうやだ……泣きたい。
 こんなの、あとで何があったのか蒼兄や唯兄に訊かれるに決まっている。お父さんやお母さんだって疑問に思わないわけがない。しかも、ツカサの家に来ていることは家族みんなが知っているのだ。何も訊かれなかったとしても、それはそれで複雑だ。
「翠葉ちゃんには平常時のバイタルをループさせる方法を教えてあるけど、忘れているか、もしくは設定する余裕もなかったのかと思って。とりあえず、翠葉ちゃんが覚えているか確認してもらえる?」
 部屋に戻ってきたツカサに、
「……覚えてる」
 私が答えると、ツカサはすぐに部屋から出ていった。
「……その方法、俺も知りたいんだけど」
「それは俺が教えられることじゃない。知りたければ翠葉ちゃんに訊きな。用件はそれだけ」
 玄関が閉まり部屋に戻ってきたツカサは、
「悪い……バングルのこと忘れてた」
 ひどくばつの悪い顔で謝られた。
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