光のもとでⅡ
「お茶淹れてくる」
「あ、自分でするよっ――」
 立ち上がろうとした翠の頭に手を置き、
「だからさ、今日は誕生日を祝う日じゃないの? それとも何、祝わせるつもりがないの?」
「そんなつもりは……」
「とりあえず、部屋で待ってて」
「はい……」
 俺は翠を置き去りにしてキッチンへ向かった。

 ハーブティーの用意をしながら思案する。
 間違いなく翠の唇は震えていた。身体から震えていたわけではないが、唇の震えが何を意味するのかはわからない。
 キスは大丈夫だったんじゃないのか? キスは受け入れられたわけじゃないのか?
「キスして、って……」
 それはあの場限りのことだったのだろうか。
 自分がどこで何を勘違いしたのか、と分岐点を探すも思い当たる節は見つからない。
 理性を保つ自信がないと話したときだって、そんな自信はなくていいと言った割に、行為は受け入れられないという結論。
 何が良くて何がだめなのか、全くわからなくなってしまった。
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