光のもとでⅡ
 これはもう一度尋ねる必要があるのかないのか、そんなことを考えているうちにお茶の用意は終わってしまう。
 部屋に戻って早々、そんな話をするのは躊躇われる。なら、どんな話題ならいいのか――。
 少なくとも、話題を用意する必要がある程度には戸惑っていた。

 ひとつ深呼吸してから部屋へ戻り、
「高崎さんに訊きたいことってなんだったの?」
「あ、お仕事のこと。将来の夢とか、進路とか、そういう話を訊きたくて」
 本屋での様子からしてそんなことだろうとは思っていたが、それで話を訊く相手がなぜ高崎さんなのか、という疑問は払拭できない。
「話を聞いて、何か見出せたわけ?」
 翠は少し沈黙してからこう答えた。
「……まだ、どの方向へ行くかは決められていないの。でも、今始めないと受験に間に合わなくなるものがあることには気づけた。だから、ピアノとハープのレッスンを再開することにしたんだ。それから、日曜日は高崎さんのアシスタントをして、植物のことを教えてもらえることになった」
 翠はラグ一点を見て話していたが、姿勢は前を向いているように思えた。数時間前の、「どうしよう」といった困惑は明らかに解消されていた。
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