光のもとでⅡ
 俺は翠の近くに膝をつくと、
「まずは深呼吸……」
 猫背なっている背に手を添えると、わずかに身体がビクリと震えた。
 やっぱり、これはもう一度言葉にして確認するべきなんだろうな……。
 気は進まない。でも、「確認」を怠ったら翠を失う気がする。
 わずかな緊張を纏い、
「言ってほしいって言われたから言うけど、俺はキスもしたければ翠に触れたいとも思ってる」
 翠はきゅっと眉根を寄せ、一度俯いてから視線を合わせてきた。
「ツカサ、もう少しゆっくりがいい……。玉紀先生が仰っていたの。こういう欲求は女子より男子のほうが衝動的だって。その意味を今身をもって知ったのだけど、私は……もう少しゆっくり進みたい。まだ、キスをして抱きしめられるだけでいっぱいいっぱいなの。だから、それに慣れるまで、もう少し待ってもらえないかな……」
 本当にそれだけ……? 俺のことを怖いと思っていたりするんじゃないないの?
「ずっとこのままがいいって言ってるわけじゃないの。ただ、もう少し待ってほしい」
 翠の言葉をそのまま受け取っていいのか――俺を気遣う部分が多分に含まれているとしたら、この先この件においては意思の疎通ができない気がする。
 翠が言う、「ずっと」はどれほどの期間をいうのか――。
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