光のもとでⅡ
「結婚して出産しても仕事はできる。何歳でスタートするかが変わるだけ。私はウィステリアホテルの内定をもらっていたわけだけど、もともと静さんを通した縁故だったこともあって、就職時期が先延ばしになっただけ。そういう意味ではラッキーだったなと思ってる。だから、実際には何も失ってないのかもしれない」
 でも、それは義姉さんが大学を卒業する年に妊娠が発覚したから、という気がしてならない。
「もし、高校生の身分で妊娠が発覚したら――?」
「え……?」
「義姉さんの場合は大学を卒業する年の妊娠発覚だったからそう言えるんだと思う。もし、高校生だったら同じことは言えない。違いますか?」
「……そうね。今の私が高校生だったら、妊娠がわかった直後はもっと動揺したと思う。出産を目前にした今だって、こんなあっけらかんとしていられたかは謎。だって、高校は中退する必要があるだろうし、友達とは明らかに違う道を進むわけだからさ。それに、今以上に世間の目を気にしたとも思う。でも――」
 義姉さんは途中で言葉を区切り、こう続けた。
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