光のもとでⅡ
「司に訊かれたのは、妊娠して得たものと失ったもの」
「……え?」
「妊娠して何を得たのか、何を失ったのかを訊きにきたよ。私は大学を卒業する年にできちゃった結婚したけど、翠葉ちゃんはまだ十八歳。たった数年の差だけど、やっぱりそこは大きな壁があると思うんだよね。そういう話をした」
「……どうして?」
「翠葉ちゃんは司とそういう関係になることを拒んだでしょう? 子どもができたら中絶はしたくない。でも、今はまだ高校生でいたい、って。その言葉を受けて、司なりに理解しようとした結果じゃないかな。性別が違うだけで相手の考えを理解できないことがある。でも、司は翠葉ちゃんのことを理解しようとしてるよ。そういう部分、司って優しいよね」
 果歩さんはにこりと笑った。
「果歩さんは何を失って、何を得たんですか……?」
 口にしていいのか戸惑う内容だった。でも、司が訊いたのなら私も訊いていいだろうか――。
 そんな甘えとも取れる気持ちで口にした。
「そんな申し訳なさそうな顔しなくていいってば。話を振ったのは私なんだからさ」
 果歩さんは冗談ぽく私のこめかみの辺りを小突く。
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