光のもとでⅡ
 ツカサの顔を見上げると、
「性行為……の意味」
 性、行為……の、意味――。
 私はしばらく瞬きも忘れてツカサの目を見ていた。
「願いごとはきいてもらえるの?」
 次なる言葉が降ってきて慌てる。
 ツカサのことは大好き。信用も信頼もしている。でも、まだ行為に及ぶ覚悟はない。
「ツカサ……ごめん。この願いごとは――きけない。まだ、怖いの……」
 もう何度こんなやり取りを繰り返しただろう。そろそろ呆れられてしまうだろうか。愛想を尽かされてしまうだろうか。
 様々な不安が頭をよぎる。それでも、この願いごとだけはまだきけない。
「抱きしめることとキスは?」
「……ドキドキはするけど、大丈夫。でも性行為は――」
 ふと気づけば「怖い」の種類が増えていた。行為に対する「恐怖感」と、この話をするたびに拒む私をツカサがどう思っているのか。後者のほうが気になって仕方がない。
「……怖いから、嫌なんだけど、でも、そしたらツカサは――私のこと嫌いになる? 愛想を尽かす? また距離を置く……?」
 そのどれを考えても不安で涙が出てくる。と、ツカサに再度ぎゅっと抱きしめられた。
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